-設立趣旨書-

 かつて、「子供が学校へ行く」ということは、当たり前のことでした。この当たり前
のことが、今ではとても難しいこととなっております。また昨今の低年齢化と凄惨を
増す犯罪を見るにつけ、先を歩いてきた者として、われわれは一体子供達に「何を観せ
」「何を聴かせ」「何を伝えよう」としてきたのか、そしてその刃は実はわれわれ大人に
向けられたものではないかと、考えずにはいられません。
 また、障害者支援制度が実施されるに伴い、「障害者本人の意志を尊重」し、「障害者
自らが選択した地域での当たり前の暮らし」を現実化するためにノーマライゼーション
ということが唱えられています。
 しかし、障害者を受入れ、共生共存することを当然とする土壌の育っていない日本
社会で、この理念が浸透するまでに果たしてどれほどの歳月を要するでしょうか。こ
れらのことを考えるとき、われわれが身近でなすべきことをいかに多く怠ってきてい
たことか、省みずにはいられません。
 近年、教育現場においても、障害者を取り囲む社会においても、さまざまな形で支
援体制が組まれ、試みられています。しかしながら、どの場面においても、制度だけ
では救うことのできない挟間で苦しんでいる人たちの実に多いことも現実なのです。
 では、この人たちに対して「何がかけているのか?」このことを追求するなかで、私
たちの法人活動の大きなテーマ「社会は人が創る」が生まれてきました。私たちが掲げ
るひとつひとつの事業を行う姿勢やその過程から、1人でも多くの次のようなことを真
剣に考える人が誕生することを願っております。
  「障害、学力、思想、宗教、言葉、地域環境を超えて互いを尊重し、理解しようと
  する人」「誰もがかけがえのない人間であることを知り、人間の尊厳や、人が人ら
  しく生きることの意味を考えていく人」。
 私たちは、専門職として障害児を含む児童に関わってきた者、親としてさまざまな
苦しみをくぐり抜けてきた者、そして支援してきた者、それぞれがそれぞれの立場で
療育指導、学習補習、障害児の生活サポート、フリースクール、通所訓練施設や作業
所の設立等、今日まで多くの活動をしてきました。
 私たちは、便宜さだけを追い求めることなく、この「人づくり」を全ての活動の根
元とし、行政をはじめ各関係機関、広く地域の皆さま方と連携、協調を保ちつつ、社
会に貢献したいと、法人設立に踏みきることと致しました。
  平成16年6月27日

              特定非営利活動法人くじらぐも
               設立代表者   青方 美惠子